ジョブズのスピーチからわかる…社長が「会社を大きくしない」という選択をすべきとき

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「『もし今日が最後の日だとしても、今からやろうとしていたことをするだろうか』と。『違う』という答えが何日も続くようなら、ちょっと生き方を見直せということです」

スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式辞の有名なスピーチの一文です。

このスピーチを思い出して、ある講演会でこの質問をしてみました。
「今日が最後の1日と思ったら何をしますか?」

100人くらいの参加者から出た言葉は
「家族と過ごす」
「大切な友人と飲みにいく」
「美味しいものを食べにいく」
「好きなところでのんびりする」
などという答えが出ました。

興味深いことに講演会の受講者は全員社長です。
社長って仕事が大好きで、仕事に命をかけて…みたいなイメージがありますが。
それでも、仕事をするという人はひとりもいませんでした。

きっとあなたも仕事に絡む答えは出てこなかったんじゃないか、と思います。

もうひとつジョブズの言葉から。
“このまま一生砂糖水を売り続けたいのか”
ペプシコーラからジョン・スカリー氏を引き抜くときための口説き文句だそうです。

これと同じ質問をあなたにもしたいです。
“このまま一生、その仕事をするのか?”

冒頭の答えに仕事が絡まないあなたは、この質問に対してもNOと答えるはず。

ちなみに、ジョブズの“このまま一生砂糖水を売り続けたいのか”の言葉には” それとも私と世界を変えたいのか”という言葉が続きます。
もし本当に世界を変えたいと思っているなら…最後の日でも仕事しているはず。
つまり、ジョブズの言葉には矛盾はありません。
本当にスゴい人ですね。

でも、死ぬ前に「家族のこと」「友達のこと」「美味しいもの」を考えてしまうような私たちは、きっと人生の最上位に仕事を置くことなんてできません。

 

ある社長の悲劇

「こんなはずじゃなかった…」
「自分のためじゃなく従業員のために働いているような気がして仕方がない」
ある方に紹介されて出会った「成功者」と呼ばれる社長の言葉です。

彼は年商20億円を超えスタッフも200人以上。
おしゃれなオフィスは有名なインテリジェントビル。
メディアでも「成功者」としてなんども取り上げられていいます。

「成功したい」と思ってどんどん会社を大きくしていった。
それに比例して周りもチヤホヤしてくれる。
確かに、気持ちがいい。

でも実態は…
1日14時間は仕事。もちろん休みはほぼなし…
スケジュールは秘書に全て管理されてやりたいことができない…
こんなに必死に働いても、結局、従業員を食わせるため…

一緒に飲みにいって詳しく話を聞くと…
「仕事が好きだから」と建前上は言っている。
けれど、それは働かざるを得ない状態になっている自分への言い訳に過ぎないこともよくわかっている。

けれども、もう立ち止まれない。
なぜなら立ち止まると会社が潰れるから…

 

お金の向こう側

私は年間のべ1,000人以上の個人事業主、社長さんとお会いします。
13年間、同じペース以上で仕事をしていますから少なくとも13,000人以上の方とお会いしていることになります。

私は必ず「なぜ経営しているの?」と質問するようにしています。

「業界や社会をこう変えたい」という熱い想いやら社会貢献やら企業理念やら、色々”かっこいいこと”をいいます。

でも、突っ込んで聞いていくと
「いい生活がしたい」
「家族に楽をさせてあげたい」
「子供にいい教育を受けさせたい」
「モテたい」
こんな答えが返ってきます。

「もっと稼ぎたいから」「もっと従業員を増やしたいから」と答える人はゼロでした。
お金を稼いだ、会社を大きくしたその向こう側を答えます。

にも関わらず、多くの社長はもっと利益を増やし、もっと従業員を増やすことに必死。
我々、経営コンサルタントはこの「もっと!もっと!」のおかげでメシが食えているのですが。

 

思ったよりお金はいらない

あなたが経営を通じてあなたが本当に手に入れたいものはなんでしょうか?
その答えははきっと冒頭の「今日が最後の1日と思ったら何をしますか?」という質問とつながっているはず。

そして、それにはどれだけの売上と利益、そして、どれだけの従業員数が必要なのでしょうか?
業界での影響力を高めて本当に実現したいことがあるのなら、シェア1位を狙うよりも別のやり方はないですか?

もっとパーソナルな話で考えるとわかりやすいです。
あなたにとって満足度の高い生活を送るのに年間いくら必要かって考えたことありますか?

あなたがお子さんに十分な教育環境を与えて…
自分が万が一のときに家族にお金を残してあげて…
ご家族が病気になったときに高額医療を選択できて…
毎日の食事をオーガニックにして…
週1,2回は値段を気にせず外食して…
2ヶ月に1度は国内旅行、半年位に1度は海外旅行して…
(たとえ結婚していたとしても)キレイな彼女のひとりやふたりもつくって…

この理想の1日、理想の1週間、理想の1ヶ月、理想の1年を考えるワークをクライアントにしてもらうと年間4,000万円〜5,000万円もあればお釣りがきます。
7割くらいの人は2,500万円あれば十分です。

 

会社を大きくしない選択肢

これだけ稼げば十分なのに、なぜもっと会社を大きくしたいって思うんでしょうか?
「会社って大きくしていくものだから」という暗黙の前提条件のせいじゃないでしょうか。

成功している会社としてメディアに掲載されるのも、研究対象としてあげられるのも右肩上がりで成長している会社です。
「右肩上がりで成長しなければ!」という義務感は、それら洗脳されているにすぎません。

もしくは「アイツに負けたくない!」という他人の比較からでしかありません。

最後の1日を満足して過ごせる幸せを得るために働いていると考えた場合、別に会社を大きくする必要なんてありません。
実際、会社を大きくしなくても誰にも迷惑もかかりません。

もちろんベンチャーキャピタルなどの株主が入っていれば右肩上がりの成長は必須です。
所有者である彼らから右肩上がりの成長を求められたら…使われる側である経営者は逆らえませんから。

でも、あなたの会社の株主は?あなたですよね??
十分に稼げばそこで会社を大きくするのをやめる、という選択肢もあるということです。

なんのためにビジネスをしているの?

私はコンサルタントとして社長に問うているのが「なんのために会社を大きくしているのか?」「本当に会社を大きくしたいと思って会社を大きくしているのか?」ということ。
そして、「そんなものだから」と会社経営していませんか?ということ。

あなたはやりたいことがあって会社を起こしたはず。
そのやりたいことができていますか?
そのやりたいことは会社が大きくなければできませんか?

もちろん大きくしなければ実現できないなら大きくすることは必要です。
でも、そうでないなら大きくしないという選択肢もあっていいんじゃないでしょうか?

無目的に会社を大きくすることが不幸を生みます。
いつのまにか会社を維持するため、スタッフに飯を食わせるための仕事になるわけですから。

イヤなお客と付き合い、従業員を喰わせるためにやりたくない仕事も受注し、結局、最後の尻拭いも自分。
結局、毎日働き詰め。
子供の運動会に出られない…
家族のためと夜中まで仕事。寝顔しか見ていなかった娘を久々に抱っこしたら泣かれてしまった…

そんな悲劇は、右肩上がりの幻想に囚われ会社を経営している目的を忘れているからこそ起こります。

 

このブログの目的

私は多くの社長に「会社を大きくしない」という選択肢を提示してきました。
そして、その選択をした社長のお手伝いをしてきました。
逆に、自分のビジネスをやっている目的を改めて考え、「会社を大きくする」ということを再選択した社長もいます。(もちろんそのお手伝いもするのですが。)

私はコンサルタントとして「メシを食うためにではなく、楽しく仕事をすること、やりたことをやること」を社長に実現してもらうお手伝いをしています。

もしそこに右肩上がりの成長が必要なら、それをお手伝いします。
でも、そうでないなら成長に囚われないビジネスのあり方を構築していく。
それが私のライフワークになっています。

「成長に囚われないビジネス」というのは直接話すクライアントにはお伝えしてきましたが…
不特定多数の方に体系的にお話しするという機会はなかなかありませんでした。
なので、改めて「会社を大きくしないという選択」「利益ではなく社長の時間を増やしていく経営」について考察したいと思います。

会社を大きくするか、そこそこで止めるか。
それを社長が自分で再選択してもらうこと。
そして、そこそこで止めると再選択したときに何をすればいいのかを伝えること。

自分の思う通り生きるために起業したはずなのに、「大きくしないといけない」という謎の前提条件に縛られているっておかしくないですか?

「会社を大きくすることには雇用や税金などの社会的意義がある」
「ゴーイングコンサーン(会社の永続性)を無視するのか」
「社長が倒れたら会社が終わる」
「競合は成長するんだから相対的に弱くなって結局負けてしまう」
「そんな自分勝手なことを言うから日本の経済は…」
など様々な異論反論は今までもたくさんいただいています。

それについても私なりの回答があるので、今後お答えしていきたいと思います。

これをご覧になって会社を大きくすること、大きくしないこと、(場合によっては会社を小さくすること)を再選択するきっかけにしていただければ、と思います。

 

まとめ

「会社を大きくする」というのは前提条件でもなんでもない。
単なる幻想。
価値観のひとつに過ぎない。

だから、まずは自分でビジネスをしている目的を考える。
その目的に応じて、会社を大きくする、大きくしないを再選択しよう。

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